Politics

【ベイエリアの歴史47】1992年、静かなる時代転換(ただしイケメンに限る)

2008年にオバマが流れを断ち切るまで、共和党のブッシュ王朝、民主党のクリントン王朝が交代で大統領になるのかもねー、といった話がありました

その王朝創始者である(?)クリントン夫が大統領選挙に勝ったのは1992年のことでした。その頃私はニューヨークに住んでいましたが、正直いってその時の自分の感想をよく覚えていません。2000年に子ブッシュがゴアに勝ったときは「えー、なんかやだなー」と思った記憶があるのですが、前に書いたように80年代は「共和党でいいんじゃね」と漠然と思っていたし、92年当時それほど共和党がキライではなかったので、どっちでもいいやー、ぐらいだったのかな、と思い返しています。

しかし、これまた前に書いたように、カリフォルニアがガチガチの共和党支持から民主党支持にあっさり鞍替えしたのが1992年で、その後は一度も共和党に戻ることなく、ずーっと民主党が勝っているガチガチのブルーステートになりました。

今ウィキペディアでこのときの経緯を読んでも、現職の強みを吹っ飛ばすほどの、巨大州カリフォルニアの大転換をもたらすほどの、大きな落ち度が父ブッシュにあったようには見えません。一方で、ビル・クリントンは選挙戦の間から女性スキャンダルが出たりして、ヒーコラ言いながら当選にこぎつけたように読めます。

ただ、ブッシュの言っていることが「なんとなくズレている」感じがしたことは覚えています。それは、やはり1989年の「ベルリンの壁崩壊」が原因でしょう。選挙戦中、ブッシュは「外交戦略」の実績を強調していました。実際に、レーガンのときからずっと言ってきた「ソ連打倒、社会主義打倒」を彼のときに成し遂げたワケです。これに対し、クリントンは「格差社会是正」などの国内問題を取り上げていました。

マルクス・レーニン主義も「資本家打倒」的な思想なわけですが、「ナニナニ打倒」というスローガンは長期的にはあまりよくない、と改めて思います。打倒が実現した瞬間に終わりになってしまうからです。共和党も、「ソ連打倒」が終わってしまっておしまい、でした。

当時のビル・クリントンとアル・ゴアの写真を並べると、まぁ、ぶっちゃけ、父ブッシュよりずっと若くて、イケメンであります。長身・イケメンが選挙に勝つことが多い、というのはよく言われることで(もちろん例外もあり、ゴアも子ブッシュに負けました)、オバマも「イケメン」点が加点されたという側面もあります。そして今年の大統領選が「嫌われ者同志の戦い」と言われるのは、実は「どっちもイケメンではないから」がホンネだと思ったりいたします。

とにかく、ベルリンの壁も、クリントン政権の誕生も、なぜか当時の私にはそれほど劇的な記憶として残っていません。ベルリンの壁も「へぇー、そんなことほんとにできるんだ、でもまたこの人達は、プラハの春みたいに弾圧されて、もとに戻っちゃうのではないのかな・・」と思っているうちに、いつの間にか戻らなくなりました。

そしてその後、90年代の間に、共和党の言うことが(私にすればどうでもいいような)ライフスタイル保守に偏っていき、どんどん共和党のイメージが悪くなってしまいました。

本当に大きなコトは、庶民から見れば遠い世界の出来事のようなことで、それがだんだん積み重なり、静かにいつの間にか変わっていくのかもしれません。

「死ぬ気」でやってるヒラリーと普通のオバサンの役割

単なる感想の回です。昨日の大統領ディベートを見終わって、いろいろ考えました。

ヒラリー・クリントンは「健康不安」と言われていますが、実際に病気を持っているいないにかかわらず、68歳です。(トランプはもっと年寄りですが。)私よりも一回りも上です。私はヒラリーに比べればずっと楽ちんな仕事ですが、それでも更年期の時期を過ぎて、がくっと体力が落ちました。同年代の多くの女性よりは体力的に恵まれていると思うし、ずっとスポーツをやってきているし、まさか私が・・と思っていたのに、最近は骨粗鬆症の一歩手前で足の甲を骨折したり、ムリをして疲労のあまり階段から落ちて数週間寝たきりになったりしています。

どんなに健康に気をつけ、いろんなことをヘルプする人が周囲にいたとしても、あんなに厳しい選挙戦を戦っているヒラリーは体力的にはとてもシンドいのではないかと思ってしまいます。今後、アメリカの大統領は世界一の激務で、どの大統領も任期中にボロボロに老化します。本当に、ヒラリーは「死んでも仕方ない」という覚悟でやっているような気がします。

ずっと法律と政治の世界で努力を重ねてきて、子供を育て、たぶんその間はいろんなことを諦めながら、チャンスを伺い、選挙に出て一度は失敗し、さらに巻き返し、そしてようやく巡ってきた最大のチャンスです。彼女自身のメリットは、いまさらお金のためや名誉のためではないでしょう。選挙に出たり、実際に大統領になれば、黙って静かにしていれば決して起こらないいろんなバッシングにさらされます。それでも、やろうという根性は、ある意味では「野心」なのでしょうけれど、いろんなモノを背負って、たとえ死んでも今やらねばならない、という使命感があるのではないかと。(そして、思いつきのぽっと出のトランプごときにこんな目に合わされるのは本当に理不尽と思っていることでしょう。)自分と比べて、ついそんなことを思ってしまいました。

私はといえば、別に何事も成し遂げていないただのオバサンです。昔は、スーパーウーマンに少しでも近づこうと努力しました。それで多少は前進できましたが、まぁせいぜいこんなところです。それでも、56歳のこのトシまで、子供にも恵まれながら、ずっと仕事をして経験を積み重ねてくることができました。私よりも年上のワーキング・ウーマンは、少なくとも身の回りにあまり多くありません。かつて、このトシで働いている方はごく少数の「スーパーウーマン」でした。超絶的な才能や運や体力に恵まれていたり、お金持ちで家庭の管理を人に任せることができたり、子供をもたなかったり。そうではなく、自分で家事も育児もやるミドルクラスの普通の女性が、このトシまで仕事して経験を積む、という例は、日本でもアメリカでも、過去にはあまり多くないと思います。私達が、第一世代ぐらいかもしれません。

歴史に残る業績はヒラリーにまかせて、私は普通のオバサンとして、何かあったとしてもどうせ大したことない「最後の業績」を無理して追い求めるよりも、この後に続く世代の女性たちが「死ぬ思い」をしなくても普通にコツコツと仕事を続けていくモデルになるほうがいいのかもしれない、と思うようになっています。もう階段から落ちないよう、慢性病にもならないよう、あまりムリをせずひどいボロボロにならない程度に、コツコツとやっていこうかと思います。

【ベイエリアの歴史46】レーガンの時代から諸行無常へ

古い時代はいざしらず、少なくとも20世紀以降ぐらいのスパンで、共和党が最も強かったのは、1980年代のロナルド・レーガンの時代です。そして、レーガンがあまりに強かったせいで、彼の政策や思想が現在に至る共和党の枠組みとなり、それが時代に合わなくなって、今の共和党の混乱を引き起こしています。まさに祇園精舎の鐘の声、諸行無常・盛者必衰であります。

現在から振り返ると、1960年代というのはアメリカが強かった古き良き時代、とつい思ってしまいますが、政治的には44/45で書いたように、暗殺と謀略が相次いだ混乱の時代でした。これに続く1970年代は、本格的にアメリカ経済が斜陽に向かう時代となり、2度の石油ショックで「化石燃料ベース」の大繁栄エコシステムが崩れてインフレがひどくなりました。従来型「謀略」政治手法のニクソン(共和党)がウォーターゲート事件で失脚、その次のカーター(民主党)は、日本国の私と同じ苗字のかつての某首相のように、「素人だからクリーンぽい」ということで大統領になっちゃった人で、進行するインフレとイラン人質事件に対して右往左往するばかりでした。

そのカーターを大統領選で完膚なきまでに叩きのめして颯爽と登場したのが、ハリウッドのカウボーイ、レーガンでした。

レーガンが俳優出身というのはよく知られていますが、俳優としてはそれほど実績がなく、それよりも「俳優組合」(Screen Actors Guild, SAG)のトップとして、戦後の「赤狩り」の時代を乗り切ったことが、その後の彼の政治キャリアにつながっています。「組合」ですから、SAGも赤狩りの時代には「狩りの対象」でありました。この頃レーガンは民主党支持だったそうですが、彼はSAGから「社会主義的な思想を抜く」よう努力し、「社会主義への憎悪」が強くなって、保守派・共和党へとコンバートしました。そして例の1964年共和党大会でのバリー・ゴールドウォーター支持演説で注目され、本格的に共和党の政治家となっていきます。

その後レーガンは、我らがカリフォルニア州知事を2期勤めました。1970年代といえば、UCバークレーを中心に学生運動が最盛期の頃でした。ヒッピーや学生運動はそういうわけでサンフランシスコ/北カリフォルニアがメッカでしたが、一方で一般庶民の間では反感が強く、レーガンは州兵まで動員して運動を抑圧しました。

そして2度の予備選敗退を経て、1980年についに大統領選に勝ちます。レーガンの政治思想は「アンチ社会主義、小さな政府、州への権限委譲」であり、共和党の中でも保守派寄り、「東部エスタブリッシュメントではない、西部新興州を地盤とする、アウトサイダー的な右派」という意味で、ゴールドウォーターの進化形のようなものです。下記いろいろ考えると、突き詰めればやはり「社会主義打倒」が彼の根本思想であった、と思います。

レーガン時代は、対ソ連軍拡を強化したことに加えて、「サプライサイド経済学」政策を特徴としています。これは「供給側=企業活動を促進すると経済が成長する」ということを優先しており、それまで主流だった「需要側=ケインズ経済学=公共投資で雇用を創出して需要を作り出す」のアンチテーゼとして登場したものです。政策的には、「限界税率(今よりも収入が増えた場合にそれに伴って税率がどれだけ上がるか)を抑制すると、人々は収入を増やす努力をするのでよく働くようになる(その結果、税収の絶対額はかえって増える)=税の累進性を緩める、最高所得税率を下げる」と「企業への投資を促進するため、キャピタルゲイン税率を下げる」ということをやりました。実際にレーガン時代に経済は成長し、政府の税収も上がりましたが、減税の効果はあったとしてもわずかで、実は代替として他の税金を引き上げた分、特にFICA、すなわち給与雇用者とその雇用主が負担する税で、メディケア(低所得層向け保険)やソーシャルセキュリティ(老齢年金)に使われる分の引き上げが効いているとされています。そして、軍事費が増大する一方、低所得向けのセーフティ・ネットをどんどん削減してしまいました。それでも、お金持ちがより儲かり経済が成長すれば、末端まで恩恵が「トリクルダウン」するとされました。こうして、バーニー・サンダースが攻撃する、「金持ち優遇、庶民冷遇」の仕組みが出来上がったわけです。

その時点でこの考え方が正しいと証明された事例はなく、当時から現在に至るまでメジャーな経済学者はこの考えを支持しておらず、やはりそんなうまい話はなかったという結果になっていますが、とにかく「社会主義国がやってること」の真逆をいく仕組みであり、要するに「アンチソ連、社会主義打倒」という当時の時代の空気に合っていたから支持されたということなのかな、と思います。

さらにこの時代、「社会主義打倒、小さな政府、ビジネス優遇」という政治思想とは直接の関係がない、「ライフスタイル保守」の人々が共和党と深く結びつきます。具体的には、「保守キリスト教」「堕胎反対」「銃規制反対」といった団体です。当初南部の保守派キリスト教団体は、南部ジョージアを地盤とするカーターを支持していたけれど、あまりにカーターがダメだったので見捨てて、共和党に鞍替えしてしまった、という記述があります。また、レーガンはカリフォルニア州知事時代に条件つきで堕胎を規制緩和する州法に署名しましたが、その後の結果を見てこれを深く悔やんでプロ・ライフ(堕胎反対)に鞍替えし、また自ら全米ライフル協会(NRA)に加盟してNRAが初めて正式支持した共和党大統領候補となりました。

私がアメリカに来たのは1987年、レーガン政権の最後部分にあたります。今なら「リベラル」の雰囲気の強いスタンフォード大学でも、当時ビジネススクールではやはり「ビジネス優遇」の共和党支持の人が多かったように思います。私自身も、アメリカ市民ではないし特に政治信条はなかったですが、周りに影響されて漠然と「共和党でいいんじゃね」と思っていました。諸行無常であります。

<写真>ロナルド・レーガン By This media is available in the holdings of the National Archives and Records Administration, cataloged under the ARC Identifier (National Archives Identifier) 198600.This tag does not indicate the copyright status of the attached work. A normal copyright tag is still required. See Commons:Licensing for more information.

<出典>Wikipedia

 

みんなでお手々つないで貧乏になった「非格差社会日本」

さて、前回の「格差社会」の続きの話です。

よく取り沙汰されるこの「トップ1%が超金持ちになっている」というアメリカのグラフに相当するものが日本でもないかと調べてみたところ、区切り方が違うのですが、上位20%と下位20%の所得水準推移というグラフが出てきました。(研究者本川裕さんという方のサイトから引用しました。政府の家計調査をもとにした個人の研究のようで、ソースの数字検証まではしていませんが、長期にわたって研究されていることや説明がきちんとされていることなどから、信用に足ると判断しました。)

これによると、上位も下位も、仲良く一緒に所得が下がっている(そして、最近ではむしろ格差が縮小している)ということがわかります。その理由として、作成者の本川氏は、「景気循環と所得のビヘイビア」と「年齢層の推移」の2つを主な要因として挙げています。前者は、2000年以降の長期停滞期に、高所得層の所得低下が起こった一方で、低所得層ではそれ以上は下げられないから停滞という現象です。ただし、ソースに単身世帯が含まれていないので、ニート・フリーターや独居老人が除外されており、これらも含めれば多少異なる数字となるかもしれません。

一方、後者のほうが、日本における年齢層と所得の相関関係を要因としているので、話としては面白いです。年功序列の中では、一般に高年齢層のほうが所得が高くなります。この図でいえば90年代の格差拡大時に、高所得層は50歳代が一番多い比率を占めていました。しかし、2000年代以降は、高所得層に占める50歳代が減少する傾向にあるそうです。年功といっても、60歳代以上は年金生活者が増えるので、より低い所得層に移行する人が多くなります。つまり、2000年代なかば以降の格差縮小は、本来なら年功序列で給与が最大になるはずだった50台の人たちがそんなに貰えなくなっている、年功序列が崩壊している、ということを表しています。

一方、「格差社会」のアメリカではどうかというと、オバマ政権の間、前回お話した「所得上位者」のほうは手をつけず、もっぱら「最低層の底上げ」に注力していた、というのが私の印象です。リーマン・ショックで傷ついた金融セクターを「救済する」ということでいろいろ批判があり、もうひとつの金持ち製造装置であるシリコンバレーについては、ITを使っていろいろな課題を解決しようという方向(例えば、電子カルテ化や電力スマートメーター導入のための補助金、ロボット研究開発のための大学への拠出金など)で間接的に支援しました。最低賃金は、連邦の最低賃金は変わっていませんが、主要な州で2014年に広範な引き上げが行われ、シアトルは先頭を切って時給15ドルに向けての段階的な引き上げが始まっています。

これに対し、バーニー・サンダースが強力に主張し、選挙戦で粘ってついに今週の民主党大会での綱領とヒラリーの政策に入れさせたのが、「金持ち」対策です。「お金持ちになる」のはいいけれど、いったん金持ちになったら、「フェア」な税金を払ってね、ということです。(さすがに「お金持ちになっちゃいけない」と足を引っ張ると、イノベーションと産業成長を阻害する、極めてアンチ・アメリカンなことですので。)他にも、公立大学の無料化や金融セクターの規制強化など、直接お金持ちからお金を奪うわけではないけれど、現在お金持ちでないより広い範囲の人にチャンスを与えようという政策を掲げています。

今週木曜日の民主党大会の最終日、ヒラリー・クリントンの指名受諾演説では、これらの政策を取り入れることを明言、特に「お金持ちにフェアな負担を」という点を強調していたのが印象的でした。ヒラリーが大統領になったら、いよいよ「キャピタルゲイン税の引き上げ」ということになるかもしれません。

<出典> 社会実情データ図録(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/)<写真>民主党大会でのクリントン指名受諾演説、Getty Images>

 

アメリカと日本の「格差社会」の類似と違い

アメリカの格差社会があまりにひどくなってきたことが、今年の大統領選大荒れの背景である、という話を以前のブログで書きました。昨日の民主党大会でバーニー・サンダースが演説をしましたが、このスピーチは彼のこれまでの主張をコンパクトにまとめて埋め込んでいるので、ご興味ある方は動画で全文視聴してみてください。

「ベイエリアの歴史41」で書いたように、サンダースの主張は、私が少し前に読んだ経済学者ジョセフ・スティグリッツの本の内容とほぼ合致しています。(ただし、サンダースは自分の経済政策アドバイザーが誰かは公表していません。)現在アメリカの格差社会がどれほどヒドイかという話はあちこちで流布していますが、では「なぜそうなったのか」という点については意外に語られていません。おそらくは、見解がいろいろあって定説になっていないのだと思いますが、とりあえずまとまったもので私が読んだのがとりあえずこの本なので、それを下敷きにして、日本と比較してみましょう。

アメリカに関していえば、(1)「所得上位の1%」の収入はどんどん増えているのに、(2)「下位90%(つまりほとんどの人)」は全く増えていない、という2つの方向で格差が拡大しています。このうち、(1)は日本にはあてはまらず、(2)のほうは日本でも似た現象である、と私は思っています。そして、どちらの動きも、「製造業からサービス業へ」という、先進国共通の大きな経済構造の動きに加えて、アメリカ特有の政策チョイスによるもの、と思います。

 

どちらもいろいろな要因が絡んでいますが、わかりやすいところで言うと、まず(1)は「リスクをとって起業したり、新しいものや海外に投資したりする人たちに大きな報酬を支払うことにより、産業を興隆させよう」という政策的な意図があり、これに伴って「キャピタルゲイン税率が、お金持ちの所得税率より圧倒的に低い」という仕組みがあります。所得税は累進制ですので、高額所得者は40%となりますが、キャピタルゲインは15%です。このため、シリコンバレーを含めた米国企業の幹部は、給料をもらうよりも株をもらうほうを好み、短期的に株が上がるような企業行動をするようになり、投資銀行は株があがるようにハイリスク・ハイリターンの行動をするようになっており、これがリーマン・ショックの引き金となりました。いわゆる「サプライサイド経済」で、企業が儲かれば従業員にもトリクルダウンするという政策が、特に70年代以降に政権をとることが多かった共和党政権下で続いたことによるもの、ということになります。そして、80年代にウォール街、90年代の「ネットバブル」の時期にシリコンバレーが、突出して金持ちになってしまいました。

(2)のほうは、やはり70年代以降、「雇用よりインフレ抑制」を重視した経済政策が続き、雇用がなかなか増えなかったこと、および法的・イメージ戦略的に、労働組合の力をそぐ方向での種々の手が打たれた結果、分配を要求するパワーバランス調整装置がなくなってしまったこと、セーフティ・ネット不在により、いったん脱落した人が仕事に戻れないこと、などを主な要因としてスティグリッツは挙げており、特に「組合」については、グローバル化により海外に職が奪われることよりも影響が大きかったとしています。

(1)に関しては、サンダースやスティグリッツが攻撃する「産業振興のためにリスクテイカーに大きな報酬を払う」という仕組みのおかげで、アメリカでは少なくとも、アップルやグーグルなどの新しい成長産業が勃興しており、シリコンバレーには大金持ちがたくさんいて、お金持ちになりたい若者が世界から集まって、破壊的なビジネスを日夜試しています。

しかし、社会階層的だけでなく地域的にもトリクルダウンが起こっていない(シリコンバレーはバブっているのに、他の地域にはその恩恵がいかない)ために、新しいサービスや製品の「お客さん」になってくれるはずの「中流階級=消費者」がどんどんいなくなってしまう、という危機感が、シリコンバレーで高まってきています。

しかし日本では逆に、「(1)が欠落しているがために困ったことになっている」と感じています。リスクテイカーへの報酬が小さく、雇用維持を重視してダメ企業でも「雇用マシーン」として生き残る政策が長く続きました。従来型の企業による終身雇用以外の有効な雇用調整装置がない(ここから脱落すると「派遣・パート」というより低い層にクラスチェンジせざるを得ない)ので、会社で働く人はリスクを避けて会社にしがみつかざるを得ず、「何かを新しくやって失敗したときに大きなペナルティをうける」と「何もしないでインセンティブもないがペナルティもない」という選択肢の間で「何もしないほうを選ぶ」という行動が蔓延しました。

その結果、アメリカほどの格差はないけれど、既存企業が活力を失い、新しい産業が興らない状態が続き、結局は倒産やリストラで職を失う人が増えました。分配しようにも、その原資が企業側になくなってしまった、ということになります。悪循環はどこかで止めなければいけないので、ここしばらくシャープ・東芝・タカタなどの問題が表面化して、企業の再編が起こっているのは、安倍政権の意向なのでは、と私はつい考えてしまいます。

・・が、本当に「原資」はないのでしょうか?アメリカでよく引き合いに出されるのが、「労働生産性はずっと上がっているのに賃金が上がっていない」というグラフですが、では日本では、と探してみると、日本のほうがずっとその傾向がひどい、というOECDの統計によるグラフが出てきます。(アメリカでよく使われる図とは、少々違いますが。)

私もまだ調べている最中で、結論というほどの確信はもてませんが、なにしろ日本はアメリカと少々違う経緯ですが、やはり(2)方向の停滞と生産性の停滞により、中流=消費者の崩壊がじわじわと進んでいるように思えます。

<追記>続きを書きました→http://www.enotechconsulting.com/blog/2016/7/30

Apple should build plants in Mid-West, instead of burning cash

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Yesterday Apple announced that they are paying dividend and will acquire companies. I have always wondering - why don't they build a factory in the U.S., if they have money to burn?  Japanese auto companies, for a long time, have made SO MUCH effort to build and operate plants in the U.S., even though it could increase their production cost.  Why?  because they wanted to be a part of U.S. community, not just through their products but also by providing jobs to the local community.

As seen in SOPA incident, Silicon Valley companies have suffered weak political position in Washington.  I think it is not just they don't spend enough money on lobbyist, but also because they don't provide enough jobs (=buy voters) in the U.S. Heartland.  They are building data centers, but data centers don't hire people like factories.  They provide so many jobs in China, but not in the U.S.

Build more factories, not just in China, but also in Mid-West.  The Heartland.  It will help not just people in the Heartland, but also Apple's long-term reputation.

My article on SOPA

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I have a monthly column on Nikkei Business Online (Japanese), and a new article got just uploaded. It is about SOPA, and "California Civil War" between Silicon Valley and Hollywood.

One aspect of SOPA is the new type of "trade friction" against overseas pirate sites, and it became a political issue because it relates to jobs. I explained the basic facts about the debate, about Hollywood's position ("protect media workers' jobs") and Silicon Valley's position ("but it is too much for us, and it does not work").

The heart of the matter is that Hollywood is now aggressively trying to establish a system to harvest enough money from online video/music business, and that money gets distributed among many people in guild/union of media workers. In contrast, I think that Silicon Valley does not have a convincing system of distributing wealth among many people (not just top nerds but all the way to regular middle class workers).

It will take some time till we can establish such system... or can we??

Mini-mosque as an "anti-terrorist" measure

Ground Zero: Its Boundaries Are Elastic

If this ugly fight is not about religious freedom, as the center’s opponents assert, if it is instead a question of honoring the dead and showing respect for the families of those murdered by Islamist fanatics on 9/11, how far from the World Trade Center site might Park51 be built to keep everyone reasonably satisfied?

via www.nytimes.com

I told my 13-year old son about this "mosque on Ground Zero" issue today, and this game infected brain said, "it is a good idea to put a mosque on Ground Zero. Then, muslims will not attack there again."

Yes, that is right, son!! I never thought of it, but you are quite right.

So borrowing frin this idea, why don't we put a mini-mosque on top of every high-rise building in the U.S.? In Japan, small Inari shrine is often built on top of buildings. So we copy that. Put the mosque on the "top" so "they" can see it clearly from an airplane.

As for airplanes, also borrowing from this idea, we can paint a phrase from Quran on the body, so "they" can clearly see it. Then, they would not think of blowing up such an airplane.

These would be a way cheaper anti-terrorist solution than airport security such as today.

Michi

Inari shrine on top of a department store building in Japan:

Inari_7_thumb