経営

シリコンバレー銀行の破綻

お久しぶりのブログ投稿です。しばらくサボっていましたが、ちょっと元気を出して、ブログを書くようにしていこうと思っています。

本日、シリコンバレー銀行(SVB)が破綻したという記事で大騒ぎしております。シリコンバレーという呼称は外の人がこの地域を呼ぶのに使うことが多く、地元の企業で自ら「シリコンバレーなんとか」という名前をつける事例はあまり多くありません。その数少ない事例のおそらく最も著名な企業がこれでした。日本で言えば例えば「横浜銀行」ぐらいの感覚で、地銀の中では大手という存在でした。全国規模の大手と差別化するため、地元のスタートアップやVCを顧客としてフォーカスしていました。今回の破綻の経緯を大まかにまとめると、以下のようになります。

・もともとSVBは、VC/スタートアップの味方として、貸付の基準を緩く、預金金利を高めにしていた
・これを補うため、米国債や不動産担保ローン(MBS)に投資して資金を回しており、しばらくはこれが成功して、米国債・MBSをいっぱい持っていた
・しかし昨年FEDが金利を上げ始めて以降、新しいの債券方が金利が高いので手持ちの古い債券が売れなくなっていた
・一方、2022年から新規のベンチャー資金調達がスローダウンして、SVBに預金していたスタートアップやVCがお金を引き出すようになり手持ち資金が減少
・仕方なく古い債券を売ったら大損が出てしまった
・このため新規資金調達を計画
・しかしこの発表と同じ日の3/8、クリプト銀行のSilvergateが会社清算すると発表
・SVBのCEOは、「みんな、パニックにならないで、ウチは大丈夫だから」と声明、これを聞いた人は「え?他の人はみんなパニックなの?」とかえって疑心暗鬼に
・ベンチャーキャピタルが投資先スタートアップに「SVBは危なそうだから資金を他に移すべき」と推奨
・取り付け騒ぎ発生
・3/10、州の預金保護機構が介入して銀行閉鎖

ということのようです。参照元は下記(他にもありますがこの二つがわかりやすい)
https://techcrunch.com/2023/03/09/silicon-valley-bank-shoots-self-in-foot/
https://www.nytimes.com/2023/03/10/business/silicon-valley-bank-stock.html

また、上記よりさらに詳しく金額入りで解説している日本語ツイッターがあるので掲げておきます。
https://twitter.com/RealtyPnw/status/1634047597123088385

つまり、金利の上昇とベンチャー資金の減少が招いた結果ではあります。しかし、もともと「低い資金マージンを米国債・MBSで回して補填」という構造では、補填する側の状況が逆方向に動いたら一気に取り付けリスクが上がる、という危ない橋を渡っていることになります。これは、何で補填するかの違いではありますが、多くの仮想通貨銀行が渡っていた橋でもあります。2022年に破綻したCelsiusはその典型です。Celsiusについては下記のVoicy(音声プラットフォーム、ポッドキャストのようなもの)で話していますのでご参照ください。
https://voicy.jp/channel/2190/364674

さて、SVBはどうなるのか、他の金融機関にも波及するのか、など、今後も注目です。

【新著】「シリコンバレーの金儲け」発売しました!

先週、私の新著「シリコンバレーの金儲け」が発売されました。

私にとっては、2008年の「パラダイス鎖国」、2013年の「ビッグデータの覇者たち」に続く、7年ぶり3冊目の本となります。

本当は、「シリコンバレーの歴史」の本を書きたくて、前の本を出させていただいた講談社に打診したのですが、この新書シリーズは「学問の本」ではなく、すぐに仕事や生活に役立つ身近な知識の本という位置づけなので、「歴史じゃ売れない」と却下。それで、前半は歴史、後半は同じく以前から私が構想していた「アルゴリズムは現代の金型」という造語を中心にしてくっつける、という苦肉の策をとりました。そのつもりでお読みになると、たぶんその雰囲気がおわかりになると思います。

書き始めたのはもう2年前ですが、本業の合間に書くのでなかなか時間がとれず、最初のドラフトができたのが今年1月。ちょうど日本出張があったので、ドラフトをいったん編集の方にお渡しし、見ていただいてタイトルなど決めて・・と具体的な話にようやくはいりました。しかし、アメリカに戻ったあと、3月頃からアメリカも超特大コロナ危機に突入。後半の「現代史」部分は「シリコンバレーのバブル」の話だったので、このあたりから先はほぼ全面的に書き換える必要が生じました。逆に、サクサク書いてそれより前に出版していたら、あっという間に賞味期限が切れていたので、グズグズしていたのが幸いしました。

コンサルティングを本業とする私が本を書く意味は、「ここで起きていることを日本のビジネスパーソンにわかりやすく説明して、それが対岸の火事ではなく、自分の仕事にどう関係あるかを考えやすくすること」であると思っています。本だけでなく、最近月例でやっているウェビナーも同様です。このため、これらの世界の用語に慣れていない方にもわかるように、用語解説や比喩による説明などもしています。とはいえ、たぶん読んでくださる方は、すでに起業やITについて詳しい方も多いと思うので、あまり初級本ではなく、私の同業の友人たちにも面白がっていただけるネタもなるべく盛り込む、というところを苦心いたしました。

学問的な本でなく、面白話として、難しいと思うところは飛ばしていただき、楽しんでいただければ幸いです。なお、歴史の部分については、このブログに過去にもっと詳しく書いています。ちょっと古いので、検索が面倒かもしれませんが、「ベイエリアの歴史」というカテゴリーをポチってみてください。「ナポレオンからあの広大な領地をどうやって買いたたいたのか」など、本当は本に書きたかった話がいろいろあります。

「シリコンバレーの金儲け」アマゾンで買う

【イベントのお知らせ】JSNC講演「CESとStrata」4/10

CESStrata.jpeg

北カリフォルニア・ジャパン・ソサエティ主催の日本語イベントにて、「展示会レクチャーシリーズ第二弾:CESとStrata」の講演を行います。

4月10日4:00-7:00pm、場所はサンマテオの楽天オフィス内にあるRakuNestです。

SVOIの「展示会でベンチャーを探そう」企画をベースに、1月のCES(コンスーマーテック)と3月のStrata(データ・AI)の概況と気になるベンチャーについて紹介します。

さらに今回は、「やってみよう、ミニ・ビッグデータ」ということで、ビッグデータの典型的な活用法である「ビジネス・インテリジェンス(BI)」ツールの「ミニ版」をご紹介します。データ専門家でなくても、誰でも無料で、ちょっとばかりBIを体験できます。

お申し込みは、こちらのジャパン・ソサエティのサイトからどうぞ。

【記事掲載のお知らせ】Facebookとウーバーへの大手メディアの報道はなぜこれほど差があるのか

Business Insiderに、FBとウーバーの2題話を書きました。あえて、昨日公開された津山さんの記事とは別の見方で書いています。

どちらの考え方もアリです。個人的には私もそれほどFBに思い入れもなく、わりとどうでもいいと思っています。

なお、毎度のことですが、記事のタイトルは編集の方がつけるので、私の書きたかったこととは少々違いますが、仕方ありません。本当は、ウーバーの技術的問題だけをgeekyに書きたかったのでしたが、まぁいろいろあってこうなりました。

https://www.businessinsider.jp/post-164556

Facebookとウーバーへの大手メディアの報道はなぜこれほど差があるのか

Facebookとウーバーへの大手メディアの報道はなぜこれほど差があるのか

【記事掲載のお知らせ】NewsPicksの2018年大予測シリーズとビジネス・インサイダー・ジャパンに寄稿いたしました。

NewsPicks スタートアップ・エコシステムの変わり目が到来か

https://newspicks.com/news/2715087/body/?ref=index

 

Business Insider Japan 「知的ブルーカラー」時代の人材教育に有効なアメリカ流短大とは

https://www.businessinsider.jp/post-108451

 

Business Insider Japan 静かに広がるシリコンバレー・バッシング —— なんちゃってIoTベンチャーの転落

https://www.businessinsider.jp/post-107858

スタートアップ・エコシステムの変わり目が到来か

スタートアップ・エコシステムの変わり目が到来か

【ラジオ出演のお知らせ】アマゾン第二本社計画、ラジオでニュース解説しました

アメリカ時間の昨夜、J-Waveに声の出演しました。「アマゾン第二本社」ニュースの解説でした。NewsPicksにてこちらのダイジェスト+音声ファイルが出ていますので、よろしくお願いします。→ https://newspicks.com/news/2531233?ref=pickstream_865003

第二本社の建設地を公募するアマゾン。その狙いは「地方創生」か?

第二本社の建設地を公募するアマゾン。その狙いは「地方創生」か?

【記事掲載のお知らせ】なぜ日立はシリコンバレーで生き残っているのか?

ずっと前から疑問だった、「なぜ日立はシリコンバレーで生き残っているのか?」について、同社新戦略発表カンファレンスに取材して記事を書きました。

https://www.businessinsider.jp/post-105193

日立IT部門はシリコンバレーで生き残れた理由——「やめる事業」選択こそが企業を成長させる

日立IT部門はシリコンバレーで生き残れた理由——「やめる事業」選択こそが企業を成長させる