東京民泊戦争: 「外国からの来訪者」としての見方

またもや、「民泊」に関するNewspicksコメントに意外なほど多数のlikeをいただいたので、コメントに書ききれなかったことを追記してみる。

少し前に「オンデマンド労働」に関するレポートをKDDI総研サイトに寄稿した。ここでは労働力の供給について問題にしたが、民泊というオンデマンド宿泊についても同様で、キーは「従来よりも、はるかに多様なタイプの供給を爆発的に増やす」ということが画期的だと思う。

地方は事情が異なるが、東京に関して言えば、しばしば「外国人旅行者が増えて需要が増大し、宿の供給が足りない」ということが言われる。確かに、私も東京出張時にホテルが取りづらくて苦労している。

もう一つの側面としては、東京のホテルが「一人または二人の単位で宿泊する形態に最適化している」ということがある。昨年末東京でairbnbを利用した動機は、「家族全員」で泊まろうとすると、ホテルなら2部屋とらなければならず、ベラボウに高くなってしまうということだった。我が家の子どもたちはもう大人サイズなので、一人づつベッドが必要。それで、都内で広い部屋に泊まった。(地方の温泉宿では、ふつうに旅館に全員で泊まったので問題なかった。)同じオーナーが隣にもっと大きな一軒家を持っていてやはり貸していたが、そこにはフランス人の大家族が、おばあちゃんから赤ちゃんまでみんなで長期滞在していた。オーナーは海外経験が豊富な方で、外国人対応まったく問題ナシ。

ホテルは設備投資が大きいので、どうしても「最も需要が大きいタイプの宿泊形態」に合わせる。我が家やこのフランス人家族のような需要は、全体からみればわずかしかない。そんなマイノリティのために、わざわざ家族用の大きな部屋を作って遊ばせておく余裕などない。また、外国人対応を可能にするには、外国語のできるスタッフを雇うという余計なコストがかかるので、中小ホテルではそのコストをかけず、出張者や冠婚葬祭などで東京に出てくる日本人を相手にしているほうが効率がよかったわけだ。しかし、airbnbで個人オーナーが全世界を相手にすれば、商売が成り立つという仕組みが新しくできたわけだ。ありがたや。

さらにもう一つ、気づいたことがある。airbnbの貸し手になるには、本気でコレで商売する覚悟が必要だと実感したということだ。私自身、ちょっとこの商売やってみようか、と考えたことがあるが、東京で2ヶ所泊まったところのオーナーさんは、いずれも私からのメールや電話にすぐに返答し、到着時間に合わせてカギを受け渡すなど、24時間体制で対応してくださった。24時間ずっとこの仕事をやっているワケではないが、連絡があればすぐに出動できる状態でいなければならない、という大変さは、母親業で日々実感しているだけに、よくわかる。もちろん、ちゃんとやらないオーナーもいるだろうが、そういう人はあっという間に悪いレビューを書かれて沈んでしまうだろう。何事も人様にお金を頂いて商売するということは大変なことだ。それで、私が貸し手になるのは断念した。フロントがあってスタッフが24時間対応してくれる、という点は、民泊に比べてホテルのよい点であることは確かだ。カギの受け渡しの打ち合わせがけっこう面倒だったので、一人で出張するならできればホテルがいいな、とも感じた。それでも、民泊のオーナーさんは、出来る限り対応する努力をしているアントレプレナーだ。その営業努力には頭が下がった。

ついでに小さい話だがもう一つ。これまた少し前に、「外国人旅行者が好きな日本の観光スポット」として、意外なものが上位に上がってきたという記事があった。外国人だけではなく日本人も含めて、今どきの旅行者にとって、SNSにアップして話題になりやすい、「ユニークなフォトジェニック」であることはとても重要だと思う。当たり前の作りのホテルや旅館では写真に撮ろうと思わない。ユニークな体験をしやすい、airbnb的な世界のほうが、Facebookにアップしたい意欲がわく。

外国人旅行者が騒いで他の住民に迷惑をかけるというケースが実際には全体の中でどのぐらいあるのだろう?その被害と、これまでいろいろな理由で東京に泊まれなかった外国人旅行者が民泊のおかげで泊まれるようになって東京が受ける恩恵と、どっちが大きいのだろう?私のケースはごく小さな個人の感想でしかないが、マクロで見てどうなのか、興味深いところだ。そして、ホテル側がこの新しい状況に対抗するには、一方的に反対反対ではなく、「なぜ民泊がウケるのか」を自分で実感してみて、その上で自分たちの制約の中でできる適切な対策を打っていくという必要があると思う。というか、そうしてほしいものだ。