今朝ほど、近所のクリスマスツリー売り場の前を通りかかったところ、なんとすでに閉店しておりました。クリスマスまであと1週間弱、例年ならまだまだ駆け込み客でごった返している時期なのにもかかわらず、であります。
アメリカでは、生の木を買ってきてかざる人が多く、全米クリスマスツリー協会によると、昨年生木の売上が2740万本、人工のツリーは2110万本だったそうです。しかし、今年は全米的にクリスマスツリーが不足しており、大手はまだよいけれど、個人商店ではすでに売り切れで新規入荷のない店が続出しています。
その理由は、「今年が2018年だから」です。クリスマスツリーは種をまいてから売り物になるまで10年かかる、ということは、今年市場に出ている木は2008年に植えられたものなのですが、その年はリーマンショックで、倒産するツリー農家が相次ぎ、種まき量が激減してしまったそうなのです。
これは、実は「最近、新規ベンチャーのパイプライン(ブレークスルーする前の予備軍)が細っているよね」という話をSVOI仲間の渡辺千賀さんとしていたときに出た話です。
シリコンバレーでのベンチャー投資資金量推移を見ると、今年は昨年より大幅に増えて、リーマン・ショック後で最大になると見られていますが、投資件数は2015年第1四半期をピークに、その後は多少の上下をしながらも減少傾向が続いています。(National Venture Capital Asoociationによる)つまり、「一件あたりの金額が大きくなっている」ということになります。
ディール一件あたりの投資金額で見ると、500万ドル以下の少額ラウンドの比率が、2013年には全体の10%以上だったものが、現在では5%程度まで減っています。最近では、「シリーズA」(VCから本格的に外部資金を入れる最初のラウンド)からいきなり1000万ドルとか、一方で、本当ならばもうとっくに上場していてもいいはずの超大型企業(Uber, WeWorkなど)がソフトバンク/ビジョンファンドから巨額資金を受ける、「ISO(Inisial Softbank Offereing)」とも揶揄される現象とかが多発しています。
そうすると、特に有名人などのツテがない、地道にヨチヨチ歩きで始めようとしている新しいベンチャーになかなかお金がまわってきません。好況のため人手不足が続き、貧乏なベンチャーが人を採用するのも大変だし、そもそも家賃が高すぎて若い人が住めません。
現在、シリコンバレー最大のベンチャー企業であるUberは創業2009年、Lyft(の前身会社)は2007年、Airbnbも2008年で、いずれも「クリスマスツリー農家の倒産が相次いでいた時代の前後」に創業しています。実は、シリコンバレーにとっては不況の時期というのは種まきに適した季節でもあります。
なんだかんだで、8〜10年ぐらいの周期で冬がくることが、ベンチャーの世代交代を促してきたわけですが、前回の不況からすでに10年たっても冬が来ません。本来であれば「まもなく冬になる晩秋」気配があった2016年第4四半期に、どーんとビジョンファンドが設立され、以後各種のプライベートエクイティ(PE)がシリコンバレーに流入してきたことがその大きな要因と思われます。
シリコンバレーはまだまだ好景気が続いていますが、この傾向があまり長く続くと、10年後に「活きのいい若いベンチャー」が枯渇してしまうのでは、との懸念が当地ではささやかれています。
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