「売らないドレス屋」に行ってみた

相変わらず、日本でもアメリカでも、大型小売店舗がダメダメという報道をあちこちで見かけます。

かく言う私は、友人に勧められ、昨夏頃から「洋服の定額制オンラインレンタル」というサービスを利用しはじめて以来、お店で服(下着以外)を買うことがほとんどなくなりました。

そして先週、女子会仲間と連れ立って、サンフランシスコに「ファッション・ショッピング」に出かけましたが、行き先はそういうわけで「売らないドレス屋」2店。

ひとつは、Rent the Runwayという、普段着・ドレスの「月額定額レンタルサービス」。手元に3枚まで持っていてよい、という制限があり、何回返してもOKという、NetflixのDVD郵送レンタルと同じ方式です。詳細は、渡辺千賀さんのブログに書いてあるのでこちらを参照のこと。パーティドレスのレンタルから始まって、現在は普段の仕事着やリゾート着などもそろっています。

さて、このレンタルサービス、本拠はニューヨークで、それ以外にも全米いくつかの都市に「ショップ」を持っており、最近サンフランシスコにもオープンしたので、行ってみたわけです。場所は、ユニオンスクエア近くの高級デパート、ニーマンマーカスの一角。ぱっと見普通のブティックのようですが、要するに「試着オンリー」。カウンターで借りているものを返したり、注文済みのものをピックアップしたりもできますが、基本的にレンタルのトランザクションはネットでやらねばなりません。ただ、(たぶん予約しておけば)ドレスなどを「その場で借りる」ということもできるらしいですが。

そういうわけで、置いてある洋服はそれぞれ一枚(つまり一サイズしかない)で、店に在庫はありません。試着といっても、自分のサイズがあるわけではないので、小さすぎるのを無理やり当てたり大きすぎるのをつまんでみたりしながら、想像をはたらかせます。それでも、やはりネット上で見るだけよりは自分に似合うかの感覚はわかる、まさにショールームというわけです。

もうひとつの行き先は、MM Lafleurという、オンライン・ブティック。こちらもニューヨークの会社で、オンラインで自社ブランドの服(仕事着ぽいものが多いが、体にやさしくフィットして着心地がよい)を売っていて、ショールームをあちこちの都市で行脚しており、ときどきサンフランシスコにもやってきます。ここも試着オンリーで、自社ブランドだけなのでチョイスも少ないですが、サイズは大体そろっていて自分のサイズを試着できます。スタイリストさんに希望を言うと、いろいろ見繕って持ってきてくれて、買いたいものがあれば、その場でオンラインオーダーを入れてくれます。基本的には予約が必要ですが、私はこれまで2回とも、友人の予約に付き添いでついていって、それでもついでに試着させてくれます。店では、シャンパンまでふるまってくれる、本当に「サービス」ビジネスという感じです。

こうやって考えて見ると、トラディショナルな小売店というのは、上記のような「サービス」の部分に加えて、在庫を持っていなければならない、という重荷があります。販売のトランザクションの手間ももちろんあります。それがない、「スタイリストが試着だけさせてくれるサービス店」というのは、大幅に小売店のコストを軽減することになります。デパートのパーティドレス売り場では、返品率が異常に高い(パーティで一回着て返品する人がものすごく多い)という話もあり、デパートはパーティドレス売り場はやめたいらしいので、それよりはレンタルのほうが理にかなっています。最近はeコマースの配達部分の人が雇えなくてコストが上がり、困っているので、その問題はありますが、別の部分に課題が移行する感じ。

千賀さんのブログにあるように、このビジネスモデルが果たして長続きするのかどうか、まだわかりません。ただ、「小売業」の役割のうち、かならずしも「陳列・在庫・販売」のセットを全部そろえていなくても、バラして役割を持たせるというモデルも、試されているということになります。私としては、千賀さん同様、レンタル・サービスをありがたく満喫しているので、ぜひなくならないでほしいところです。