昨日、フォーブスが「アジアの女性ビジネスリーダー50名」を発表、その中に日本からはDeNAの南場智子さん、大塚家具の大塚久美子さん、アート引越センターの寺田千代乃さん、トレンドマイクロのエバ・チェンさんの4名が選ばれました。
この4人には共通点があります。いずれも、創業者または創業家である、ということです。この点については、Newspicksでフォーブス・ジャパンの谷本有香さんも(おそらく選者ご自身で)指摘しておられます。
当シリーズの第一回でヴーヴ・クリコを取り上げましたが、大塚久美子さんもバーブ・ニコール・ポンサルダンの境遇と少々似ています。「嫁入り先」ではなく「生家」ですが、私がWidow Clicquotの本を読んでいる間、頭に思い浮かべていたのは、(当時まだ「あさが来た」が始まっていなかったので)あさちゃんではなく久美子さんでした。
この本によると、バーブ・ニコールが活躍した頃、なぜか突然、シャンパン業界では複数の女性トップリーダーが固まって出現したそうです。その理由として、著者は「家業が傾いたとき、女性が活躍するチャンスが訪れるというケースが歴史的に多い」と述べています。当時、シャンパン業界全体が危機にありました。このくだりを読んだとき、人口構成の変化にさらされている家具業界も長期的に「危機状態」であり、家業が傾いて久美子さんの活躍のチャンスが訪れたというパターンか、と思い出したというわけです。
そう考えると、「男性が見捨ててしまった衰退業界の家業」が女性経営者のニッチ、という、あまり楽しくないまとめになってしまいます。この点について定量的な研究を見たことがないので、本当にそうであると言い切れるわけではないのですが、実感的にはそれに近いものを感じています。
2013年に、母校一橋大学の女性卒業生・関係者が集まるフォーラム「エルメス」の立ち上げに携わりましたが、そのときに講演会のパネル出演者を探す中で、「普通の企業の管理職女性」というのがとても少なく、人選に苦労しました。もちろん全くいないわけではありません。たとえば高島屋の石原一子さんと肥塚見春さんが該当しますが、あまりに偉すぎて、女子会に毛が生えたような会にお呼びするなど恐れ多く、もっと「フツーの課長とか部長とかやってる仲間はいないのか?」と探したのですが、本当に少ない。みんないろいろな分野で頑張っているのですが、なぜかフツーの企業のサラリーウーマンではないのです。
私はこれを「GJP現象」と名づけました。Gは外資、Jは自営、Pはプロフェッショナル。ある程度の実績が外にも知られているような女性の仲間は、ほとんどこのどれかに当てはまってしまうのです。J(自営)には、大塚久美子さんのような「家業」、南場智子さんのような「ベンチャー」、そして私のような「フリーランス」まで含めます。P(プロフェッショナル)には、弁護士、会計士、編集者などが該当します。
企業内の女性のニッチとして、「4R」=人事HR、広報PR、株主対応IR、調査Researchというのがよく言われますが、これはどちらかというとアメリカ風で、日本の企業ではあまり当てはまらないように思います。
仕事のやり方やライフスタイルの点で、自分の裁量がききやすいところを探して居場所を築いてきた結果「GJP」になったわけで、女性のキャリア構築戦略としては「当たり」のやり方であったと言えます。しかしこの3つの分野だけではどうしても数はかせげず、ボリュームゾーンである「フツーの企業のフツーの管理職→幹部」という道が開かれないと、数多くの女性がフツーに仕事ができる環境にはならないと思います。
さすがに最近では、女性経営者・管理職が、一昔前のような「スーパーウーマン」でなければならないという雰囲気は脱してきており、若い世代では今後さらに「フツーウーマン」になっていくと信じています。しかし、昨日の「フォーブス」の記事で、「あ、大塚さんが選ばれた!」と喜ぶ一方で、改めて「現状はまだまだ」と打ちのめさるという、複雑な気分になってしまいました。
(写真は昨年4月、大塚家具ショールームの漆家具展示)